所蔵品紹介コーナー


このページでは、プッペンハウスヨシノ発行の機関誌プッペンハウスニュース (休刊中)の毎号表紙で連載されていた所蔵品紹介を掲載します。


<このページは定期的に更新していきます>

創刊号 Kit's Coty Houseへ

2号 金物屋(荒物屋)へ
3号 象牙の部屋へ
4号 紋章付きの家へ
5号 雛用家道具一式
6号 The Skelskoer House
7号 ミリガン家の肉屋
8号 珍しいベッドルーム
10号 ダブリンタウンハウス

 フランクフルトの歴史博物館でフォン・ゴンタルトのドールスハウスを見て の帰り、近くのアンティーク・ドールスハウス・ショップに立ち寄った。ここの 女主人は英語を使えない。片言のドイツ語と身振り手振りで来訪の目的を告げる と、「それならいいのが入った」と店の奥に私を引きずり込んだ。「レストラン だ」というが、酒場というべきだろう。そんなに古くはないが、なかなか楽しい 。プッペンハウスのコレクションにぜひ加えたいと思って値段の交渉に入ろうと すると・・・。
 「ちょっと待ってくれ」
チロル地方の民族衣装を着た主人が言う。
「いまこちらのお客さんの注文を聞いている」
とは言うものの、雑談をしているとしか見えない。客の二人は楽士で、女の方 はチター弾き、男の方はアコーディオン弾きのようだ。所在なく周囲を見回す。 町のマルクト・プラッツ(市場)で地面に転がして売っている頑丈な壷やビヤマグ が上の棚に並ぶ。壁に掛かった三つの額にはボーリングのボールの様なものを持 った男が描かれている。ドイツでは九柱戯(確かこんな名前だったか)と言ってボ ーリングの元祖の様な球技が流行ったらしいが、それだろうか。流し台には茄で たてのソーセージ、バーカウン夕ーの上には粒塩のたっぷりついた編みパン( プ レッツェル)がぶら下がっていて、おなかの空いているのを思い出させてくれる 。主人はまだ話に熱中している。右奥で編み物をしているのは奥さんではないの だろうか。注文くらい受けてくれてもよさそうなものなのに。左の男も私に一瞥 もくれず、。パンを前に置き、本を読みながらビールを飲んでいる。とうとう私 は焦れて大声で叫んだ。
「この店が欲しい!」

 平日の、良い天気のちょうどお昼どきとあってプッペンハウスに人はいなか った。私は白昼夢から醒め、下の売店へ降りて行った。




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「南ドイツの酒場」
ドイツ 1900年頃
高57cm 幅91cm 奥行59cm


プッペンハウス ニュース 1995年3月 11号

当初白黒で掲載しましたが
撮影してきましたのでカラーを掲載します

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