所蔵品紹介コーナー


このページでは、プッペンハウスヨシノ発行の機関誌プッペンハウスニュース (休刊中)の毎号表紙で連載されていた所蔵品紹介を掲載します。


<このページは定期的に更新していきます>

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今回は一周年記念号ということで
プッペンハウスヨシノ館長・吉野福三の表紙解説です。

 威張った主人がシルクハットにダブダブのガウン、それに大きい大きい包丁 をぶら下げている。その大きさに驚かされるが、それもその筈売っているものが 豚は丸ごとだし、肉の固まりは一抱えも二抱えもあるものばかりで、買った方は どうするのだろうと心配になる程だ。一方家庭の方も料理用のまな板とは別に、 餅つき臼のような丈夫な肉切り専用のまな板が、皆備えてある。当時肉が如何に 大きいまま取引されていたか物語っている。日本でも米の一合買いの習慣がない のを思えば当然であろう。商社駐在員の経験のある人から彼地で肉を少し買うの に苦労した話を聞いたが、この習慣は最近まであったようだ。冷蔵庫のない時代 、その保存は大変な仕事であったと思う。然し、あの素晴らしいスパイス利用の 発達は、その苦肉の故のたまものか。
スパイスと言えば中学の歴史の時間を思い出す。1600年の初めイギリス、 オランダ共に東インド会社を起こし東洋で覇権を争ったが、それは肉を保存しお いしく食べる為のスパイスを得んとする戦争だと教えられた。九州の田舎で育っ た私は、スパイスといっても唐がらし位しか連想できず西洋人とは何と奇妙な人 達よ、唐がらしの為に戦争するのかと不思議でならなかった。七十余歳の今日ま で覚えておることは相当の驚きであったようだ。その時食文化の達い等教えられ ても埋解できたかどうか分からないが今一歩の説明は欲しい所、生活文化と言う スパイスを振りかけると歴史は身近なものとなり一層面白いものになると痛感す る今日この頃なり。
1本の大きい包丁は肉の流通を語りスパイスを語る。スパイス戦争は植民地戦 争を呼びそれは又、日本の鎖国につながる、等々、想像を退しくすることはドー ルスハウスの汲めども尽きぬ面白さである。

プッペンハウス ニュース 1994年7月 7号

「ミリガン家の肉屋」
英国 1843年
高75cm 幅65cm 奥行40cm

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