このページでは、プッペンハウスヨシノ発行の機関誌プッペンハウスニュース
(休刊中)の毎号表紙で連載されていた所蔵品紹介を掲載します。
| 欧米での壁紙の役割は、部屋のおしゃれ、というより生活必需品に近いもの
がある。そしてドールスハウスにおいても欠かせないものである。古い壁紙は、
見ているだけで楽しいし歴史も見えてくる。だからうかつに張り替えたりもでき
ない。汚れていたり剥げかかっていても新しくしないのは、実生活の場合のよう
なモノグサによるものではなく、資料価値を損なわないためにじっと我慢してい
るのである。 この家の壁紙は台所(左下)を除いてかなり古い。オリジナルではないようだが 、それでも1920〜30年頃のものと思われる。台所のは新しく、1940〜 50年くらいになるだろう。 天井から下がったシャンデリアはビーズで、このタイプは日本でも大正から昭 和にかけて流行したものである。台所左手前のタオル掛けはドイツ製でHandtuch 、Wischtuch、Messertuchと書かれている。手拭き布、布巾、ナイフ布の意ら しいが、こんな所にもドイツ人の性格が判る。また右手前の大きな刃のついたバ ン切り器はデンマークや北ドイツ付近でしかお目にかからない物のひとつである 。これはパンが丸太ン棒の様で固いからこのような器械が必要だったのだろう。 右上、子供部屋の中央にドールスハウスが見える。ドールスハウスの中のドール スハウスは単純計算して144分の1サイズ。それでもバターを作る女、グリー ンの陶製ストーブ(のつもり)、赤いカーテンのかかった窓にはちゃんと外の景色 が表現されていたりと、それなりの世界を主張している。 くどくど細部を説明したのは、そういう所を見ると見ないとではまったく面白 さが違ってしまうからである。最初にあげた壁紙もこの家の見所の一つで、今回 これを詳しく解説するつもりでいたが、小さな白黒写真ではほとんど判明できな いだろうと他の小物をあげてみた(これらとて写真ではあまりわからない気もす るが)。いずれ、この小さな紙面で一つのドールスハウスの魅力を網羅するには 無理がある。ただ、この解説であなたの好奇心をくすぐり、想像力を膨らませる ことになれば、何らかの意義もあろうかと考える。 プッペンハウスニュース 1994年5月 6号 |
「The Skelskoer House」 デンマーク 1900年頃 高84cm 幅98cm 奥行46cm |