第16回〜第20回 

第16回 「立体感実践編−ドライブラシ−」

師匠:
「前回のスミ入れから一転、今回はハイライトを表現する
『ドライブラシ』の説明だ」
05:
「おっと!今回は珍しくまじめな始まり・・
家でなんかあったんですか・・頭うったとか・・」

師匠:
「そんなことしかいえんのか!まじめにやるぞ!
ちゃんとやらねばここに出てこれんだろうが!」
05:
「ハーイ!スミ入れが黒だとするとドライブラシは白?」

師匠:
「おおっまあそんなところだが、通常は本体の色の明度の高い
塗色を使用するといい。
汚しではよくバフ(明度の高いベーシュ)を使う。
やり方としては筆の準備からだ。
筆は平筆で柔らかくてかつこしのある筆が一番いい。
ドライブラシに使った筆は他には使えないので、
ドライブラシ専用にするのがいい。塗料はここでも基本はエナメルだ。
 まずは筆に塗料をつける。特に薄める必要はない。
ついた塗料をけばだちのない布などにこすりつけてほとんどを取る。
布にほとんど塗料がつかなくなったら本体に塗装する。
最初は軽く凸部などハイライトになる部位にこすりつける。
こうすると少しずつ塗料がついてハイライトが浮かび上がる。
色が付きにくいので根気よくやるのがコツだ。」
05:
「・・・師匠〜!やりすぎて色がもろに付いちゃったんですけど〜」

師匠:
「筆についた塗料を良く取るのがコツだ!こんなので色着くの〜
と思うくらいまで布にこすりつけ、本体には根気よく加減を
考えてやるのがいい。」
05:
「これもやっぱり慣れがいるんですね〜、そしてやっぱり
本体:ラッカーとドライブラシ:エナメルの組み合わせなんですね。
これなら失敗してもやり直しがききますね。」

師匠:
「そう、ドライブラシとスミ入れは良くセットで使う。
これらは汚し塗装の原点であるため、汚い仕上がりになりがちだが
使う色を選ぶことによって上品な美しい仕上がりも夢ではない。
もちろんそれは、『絵画的』な感じになるので、やっぱり
かわいさには相反するな。」
05:
「あっ、回数を重ねるごとに明度を高くするとごく自然な
グラデーションができますね。なかなか難しいけど」

師匠:
「ドライブラシの高等テクニックだ。グラデーションが
わかるかわからないかくらいが一番いいと思うぞ。」

(つづく)

第17回 「エアブラシ活用編1」

師匠:
「とうとう、きたな師匠の得意とするエアブラシ塗装!」

05:
「っていうより、師匠筆塗りが下手なんでしょ。
名人の塗装する筆塗りは芸術品っていう話がありますよ」
師匠:
「ぐぐっ、確かにそのとおりだ。しかし前からもいってるように
エアブラシは初心者から扱え、上級者も使いこなせる
優れた塗装器具だ。少しでも塗装をきれいにしたければ
エアブラシは持っていて損はないと思うぞ」

05:
「でもエアブラシも安いものから高いものまで
いろいろあって、どれを選んでいいのかさっぱり・・」
師匠:
「そうだな。絵画用のエアブラシは種類も多くて値段も高め。
値段の差はだいたい口径による。安いものほど口径が大きく
細い線がかけない。逆に高いものは口径が小さくなっている。
一般に使いやすいといわれているのは口径0.3mmのものだ。
これ以上細いものはあるにこしたことはないが、かなり価格が高くなる。」

05:
「あのーさらにダブルアクションとかシングルアクションとか
あるんですがこれはなんですか?それから、引き金のあるやつと
ボタン式があるんですが、このちがいは?」
師匠:
「うん、シングルアクションとダブルアクションは結構重要だ。
シングルアクションとはボタン式のものでボタンを押すだけで
エアと塗料が出る。その割合は固定されている。それに対し
ダブルアクションではボタンを押すとエアだけ、そのボタンを
後ろにひくと塗料が出るようになっている。すなわち塗料と
エアの量の加減が自由自在だ。世間一般ではシングルアクションは
初心者向け、ダブルアクションが上級者向けといわれているが、
私としてはダブルアクションを最初から使うのがいいんじゃないかと思っている。
 そしてそのほかトリガー(引き金)式もあるが、こちらは押しボタンの
シングルアクションに近い。トリガー式は連続で使っても疲れにくいという
評判もあるがどうだろうか?使いやすいことは確かだがな。」

05:
「結局何がいいんです?」
師匠:
「うーん、難しいが手に入りやすいものとして美術用なら
オリンポスのPC101シリーズ、あるいは模型用なら
タミヤのダブルアクション品、グンゼのダブルアクション
などがいいんじゃないだろうか。
これらはだいたい1万円強の値段だ。」

05:
「塗料の入るカップもいろいろあるけれど・・」
師匠:
「そうだな塗料の供給もカップが上(あるいは横)についた重力式と
下から供給する、吸い上げ式がある。どちらを選んでも
使い勝手に差はないと思われるが、重力式の方が種類は多い。
ちなみに私の持ってるものはすべて重力式だ。」

05:
「次はエアの供給ってことになるんですけど、これは?」
師匠:
「ここからは次回にしよう!」

(つづく)

第18回 「エアブラシ活用編2」

05:
「エアブラシを使うには当然ながらハンドピースと呼ばれる
先端だけじゃどうしようもないですよね。エアを供給する
ところもなくちゃ。」
師匠:
「エア供給にはボンベ式とコンプレッサー式がある。
ボンベはガスの入ったモノをホースで取り付けて使用する。
とりあえず取りかかりとしては値段が安いので購入しやすいが
長く使おうとするとやっぱりコスト高になってしまうし、
長時間使うとエア圧が下がったりと問題もある。
最近では環境問題もあがってるし・・・」

05:
「で師匠はコンプレッサーを勧める、と。」
師匠:
「そう!コンプレッサーはエアの供給源としては理想的で
長時間使える・お金は電気代だけ・と塗装をするにはすぐれている。」

05:
「でも音がうるさい、値段が高いといった大きな欠点も
ありますよ。音がうるさいと夜はできないし、振動があれば
近所迷惑だし。また10万円もするようなものすぐには買えないでしょう。」
師匠:
「そう、これまでのコンプレッサーはプロが使うため05がいうような
欠点があった。しかしコンプレッサーが普及してきてこれらを
改良したモノが出始めたのだ。」

05:
「じゃあ音がないのは・・」
師匠:
「これはもう圧倒的にレトラが優れている。作動時でも音がしないばかりか
エアがある一定以上になると自動で止まる。ただ値段がやっぱり10万円
近くする。で注目されるのがネールアートなどで使われる小型コンプレッサーだ。
これも小さくて音がしない。値段もそう高くなく2万円くらいと思われる。
模型用ではワークから『しずか御免』という名で出ている。こちらは
エアブラシ込みで3万円くらいだったと思う。」

05:
「えーっ、そんなに高くないですね!」
師匠:
「ただ注意して欲しいのはこれらの小型コンプレッサーはエア圧が
かなり低いことで0.2kgくらいしかない。ミニチュア塗装作業で
は影響はないと思われるが、巨大なものや、通常の日曜大工には不向きだろう。
また、コンプレッサーの構造上、エアを蓄えることができないので
エアブラシも専用のエアが出っぱなしのものになる。このあたりは
お店で確認して欲しい。」

05:
「師匠のお薦めコンプレッサーはあるんですか?」
師匠:
「おう!よくぞ聞いてくれた。師匠のお薦めコンプレッサーは
グンゼのリニアコンプレッサーだ。これはレトラのようにほとんど
無音というわけではないがそれでもかなり小さい音の設計になっている。
振動も少なく夜使えるレベルだと思うぞ。
エア圧は1.0kgと通常コンプレッサーと比較してやや低いが、
模型などのミニチュア塗装では十分だろう。値段は本体が2万5千円だ。
 グンゼの製品なので模型屋で手に入りやすいのも魅力だ。
水抜きやスタンドなどの周辺機器も充実している。」

05:
「ふーん、結構いろいろあるんですね〜」
師匠:
「思うに振動や音は後々必ず気になるので、これらはよく
お店の人に確認してから買った方がいいぞ。後悔しないためにも。」

(つづく)

第19回 「エアブラシ活用編3」

05:
「師匠ぉ〜!エアブラシとコンプレッサーがそろったところで、
これで準備はいいんですか?」
師匠:
「うーん、付属品として連結のエアホースや
エアブラシのスタンドなんかが必要なのはもちろんだが、
あると便利なもの、というより必ずあった方がいい機器がある。」

05:
「なんですか〜、それは?」
師匠:
「うん、それはレギュレーターと水抜きだ。」

05:
「???」
師匠:
「レギュレーターと言うのは変圧器のことだ。
たとえば日曜大工に使うような容量の大きなコンプレッサーは
空気圧が高くエアブラシでの細かい作業にあまり向かない。
で、レギュレーターを使用して減圧してから使うのだ。
細かい作業になればなるほど減圧する必要がある。
つまりエアブラシ本来の実力を使うためには
細かな圧力設定が出来なければならないのだ。」

05:
「ふーん。めんどくさいんですね〜。」
師匠:
「アホーッ!こんなことくらいでめんどくさがっていてはイカン!
いいものを作るには姿勢が大事だ、姿勢が。」

05:
「まあまあ、そう興奮せずに。次の水抜きってなんです?
水なんか使ったところはないのに。」
師匠:
「コンプレッサーはボンベと違い、そこらへんにある、空気を圧縮して
圧力を出している。とすると当然ながら、空気中の水分も圧縮され
コンプレッサー中に溜まるのだ。そうした場合、これがエアブラシの先端まで
行ってしまうと塗面に水がついてしまうという事態になる。」

05:
「げっ!そうすると塗料と水が両方塗膜についてひどいことになりそう・・」
師匠:
「そう、それを防ぐためにホースの中間に水抜きを使うのだ。エアフィルターと
いう名のものがその役目を果たす。」

05:
「ふーん、でもどんどんいるものが増えてますます遠ざかるな〜、
エアブラシ塗装。」
師匠:
「いや、そうでもないぞ。圧力の低い『しずか御免』のようなコンプレッサーなら
その圧力の低さから減圧器も水抜きもいらないということだ。
また本体にレギュレーターの付いたものや水抜きと
レギュレーターが一つになったものなど様々あるのだ。」

05:
「そうすると逆に迷うな〜。結局何を買えばいいのかな〜。」
師匠:
「やっぱり初めてにはセットがいいだろうな。先回言ったグンゼの
リニアコンプレッサーには減圧と水抜きがセットになったものが新しく出てる。
ダブルアクションのエアブラシがついた完全なセットが39800円、
そこからエアブラシを抜いたセットが28800円(どちらも定価)とのことだ。」

05:
「あっ、みなさまへ。師匠はグンゼを勧めますが、使ったことがあるから
勧めるわけで、グンゼと師匠にはなんの利害関係もありません。
そこんとこよろしく!」
師匠:
「よろしく!」

(つづく)

第20回 「エアブラシ活用編4」

05:
「エアブラシ、とうとう買っちゃった!
でも、どうやって使うんだろ?」
師匠:
「おいおい!買っただけで使い方を知らないと!
まずはきちんと説明書は読むようにしよう。
例えだいたい使い方を知っているにしても。基本だな。」

05:
「それじゃ吹いてみたいけど塗料はどんな程度に薄めると
いいんですか?」
師匠:
「当然ながら塗料をビンから出したまま塗装しようなんていうのはNG。
溶剤や水で薄めないといけない。そうしないと先端が詰まったり、
塗料がクモの巣のようになったりすごいことになってしまう。
かといって薄めすぎると今度は塗装したときに垂れたりしてしまう。
残念ながらこの加減はやってみて覚えるしかない。」

05:
「いつもいい加減ですね〜。でも個人で塗りやすい濃度は微妙に違うかも。」
師匠:
「基本は薄い塗料を何度も塗り重ねていく、と言うことだ。
めんどくさがって濃い塗料一回で済ませようなんてすると
塗面がガタガタになることもあるぞ。いつも言っているが
良い作品を得るためには手間を惜しまないように、な。」

05:
「いろいろ試して遊んでるけど、吹き方によってツヤが違うような
気がするけど、気のせい?」
師匠:
「いや、気のせいなんかじゃないぞ。吹き方によってもツヤをある程度
制御できるのだ。すなわち塗料を絞って(あまり出さずに)エア圧を上げて
吹くと表面乾きが早く、つや消しに近くなる。逆にツヤを出したい場合は
塗料を多めに出して塗膜の乾きを遅くした方がいい。またツヤあり塗料に
リダーターという乾燥遅緩剤を入れるのも効果的だ。」

05:
「つやを出すには塗料を多めに・・・
・・・あんまり吹きすぎて、垂れちゃった!」
師匠:
「垂れる原因はエア圧が高すぎる、ガンが近すぎる、同じ箇所ばかり塗装している、
などある。ただしツヤあり塗料を作るにはある程度垂れる寸前くらいまで塗装する
のがいいとされているので熟練を要する。
まあ、まずは『同じところにガンを向けておかない』
と言うのを実行しよう。」

05:
「エア圧を下げて塗料を絞ると細かなぼかし線や円がかけますね〜。凄い!」
師匠:
「そう、こういう吹き方こそカンスプレーなどと大きく異なる点なのだ!
本当にエアブラシの応用範囲は広く、全体の塗装から細部にわたる点まで、
かなりの割合をカバーできるぞ。」

05:
「エアブラシの使いこなしで『作品に幅』が出るような気がしますね」
師匠:
「おー、いっちょまえに!」

(つづく)